雨音/いわぼっけ
 
初夏の雨音が
私の心に届く

あなたの優しさのように
私の心に届く

朝はまだ来ない

薄暗闇の
水槽に潜む小魚のように
私は夜具に籠(こ)もりながら

ひとり
初夏の雨音が
そっと心に届くのを愉しんでいる

このまま微睡(まどろみ)の湖(うみ)に
沈んでいたいから

暁はそのままそこに
とどまっていて欲しいのです

このまま微睡の湖に
沈ませていて欲しいから

湖底の砂のように
誰も詮索しないで

このまま眠らせていて欲しいのです

洞窟のようなこの仄(ほの)暗い
夜具の中に

初夏の雨音が
あなたの優しさのように

私の心に届く
はかない響きなのです

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