コーヒーと女/ソラノツバキ
いつかの冬に、どこだか遠いところへいった。
帰りは夜行バスで
何度目かのサービスエリア
昨日知り合ったばかりの赤い女と話しながらプルタブを引くと
コーヒーが飛んだ。
熱い 煮えくり返りそうなそれが
女にかかったか気になった。
夜が明けたら、旅は終わる・・・
そういえばどこから来たかだとか
仕事は何だとか
今更になって聞いたり、聞かれたりする。
向こうでは高速道路を走り屋が飛ばしている。
なんだかだんだん寒くなって、
あのプルタブを引くときの音が胸のなかで鳴った時
ぼくはもうそろそろかなと、
前と変わらぬ手つきでコーヒーを口へ運んだ。
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