雨上がりに光る月/海月
 
濡れていくアスファルト
伝う温もりは冷たく
爪先は靴擦れを起こして痛みを伴う

月のない夜の残業
軽い電車の揺れに眩暈を覚え
満員電車では自分のための場所はたった二足分
爪先の痛みは徐々に足全体に広がる

一人身にはまだ冷たい六月の夜風
雫を纏う凛とする幼い夢の欠片
下半身は痛みを引き連れる

両肩に背負うものがなくて楽だな

家庭を持つ同期の奴が言ってきた
少しだけ嫌味にも取れて
僕は片手で頬を叩いていた
その時に僕は両肩に何かを担いだ

安アパートでさえも僕を拒む
鍵を回させまいと部屋に入れさせまいと
鍵穴を堅く閉ざす
胸の辺りまで痛みが流れてきている

帰る前に拾った週刊誌
規制年齢が書いてあった
いつ頃だろう
そんなものを気にしなくなったのは?
友達と赤面しながら買った
エロ本は未だ本棚に在るはず
頭の芯まで痛みが循環している

浮雲が流れれば
静寂に浮かぶ月
痛みは天に昇り
僕は自由になれた
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