それでも/奥津 強
 
黒い 風船 先の無い ナイフ
老人達が 歩いている
墓を 海に 流し
お呼びが かかるのを 待っているんだ

それでも 俺は 行くんだ
ずっと 向こう さぁ ね 知らないよ

赤い 視線の 先の
山梨 曇り空
子供は いない どこにも いない
さぁ 彼らの 中に 入ろう
俺達の 尊敬すべき 老人達

それでも 俺は 行くんだ
ずっと 先の 何か そんな語句は 嫌いだけどね

それでも それでも

視点が 集まる
昼食の 背後は
冬の 海辺
寒いなんて 言っていられないよ

それでも 俺は 行くんだ
口に 八重歯な 微笑を 浮かばせながら

一人で
孤独に
背後に
老人と 子供を 背負いながら


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