H君へ/折釘
 
きみの「ああ」が好きだった。
やさしい瞳でうなずく、あたたかい「ああ」が好きだった。
僕らはいつも少年達のように空を見上げて、周りからは「鳥になりたいふたり」なんてひっくるめられたね。
いつからか、僕は鳥になることも諦めたけれど。
きっときみも、いくら空を眺めたところで、翼の生まれない身体だってことに気づいて、とっくに諦めているだろうと思っていたよ。

きみと最後に会った日のことは、あまり覚えていないんだ。
きみが遠い処へ旅立っていたことも、つい先日までは知りもしなかった。
それでも、きみのことを忘れてしまっていた訳ではない。それは、きみも分かってくれていると思う。
僕の中で、き
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