傘を差す人 /服部 剛
私とあなたの間には
いつも一枚の窓があり
互いは違う顔でありながら
窓には不思議と似た人の顔が映る
私とあなたの間には
いつも一輪の花の幻があり *
互いの間にみつめると
俯(うつむ)いていた蕾(つぼみ)は微かに開く
私とあなたの間には
時に雨が降っており
互いに向き合う傘の下から
瞳と瞳は無言の言葉を交し合う
私とあなたの間には
時にブラインドが掛かっており
互いの雨に濡れた一輪の花を
いつの間に忘れてしまう
私とあなたの間には
只(ただ) 長い夜があり
互いの人影が目に浮かぶよう
ブラインドの隙間から
光が漏れる夜明けを待っている
* 原民喜の詩「碑銘」より引用。
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