梅雨入り/海月
心に空いた穴を埋める様な長い雨
哀しみの様に地に響く鎮魂歌(レクイエム)
出勤に向かう車達の排気ガスの匂い
錆びの匂いに似て懐かしさを思い出させる
子供の頃に秘密基地として遊んだ廃れたバス
ちっちゃな宝物を一杯一杯詰め込んだ
今でもあの場所にはバスが停まっている
伸び放題の雑草が絡み合う
片方のタイヤのない自転車
漕いでも前に進めない姿は僕に似ている
君を失ったことで僕は片方のタイヤを失った
二度と前には進めないだろう
時間(とき)の流れに取り残された
バスや自転車の様に
手を繋ぐことで体を抱き合うことで
僕らは存在価値を分かち合えた
今は自慰行為でしか見出せない安い価値
梅雨に入り相変らずに雨は続く
僕の頬は涙か雨で濡れている
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