誰かあの駒鳥を殺して/朽木 裕
 
「嗚呼、空が落ちる」 
「落ちる筈がないだろう」 
「あの水溜りを御覧よ、ほら空が、」 
ソラガオチル 
「水中遊泳とでも洒落込む心算かい?」 
「なにが、」 
「空を飛びたいと云っていたのじゃあなかったか?」 
「嗚呼、それは」 
「それは?自殺、と云う意味での、だろう?」 
「違う、」 
「違わないね、君は本当に酷い人だよ」 
「ちがう」 
「こんなに愛しておいて、君は消えてしまうんだから」 
「ずっと、愛している」 
「そんな世迷言に僕は騙されはしない」 
「騙してなどいない」 
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