気付けば空は五月/朽木 裕
 
(触れれば痛いことが分かる 
分かったうえで君はいつも愛してくれる) 
肩に重く圧し掛かるポラロイド670AF 
一人でならばいつも平気で柵を乗り越えるけれど 
迷惑はかけられないから躊躇う 
視線の先はまだ使用されている線路 
ごめんね、何度も謝りながら 
怒るならやめるよ、少しご機嫌伺い 
「でも撮りたいんでしょ?」 
あぁ、まったく君には叶わない 
勢いよく柵を飛び越えて少し早い心拍音 
静かに静かにシャッターを、きる 
フラッシュが手のひらを焼く 
気付けば空は五月 
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