街灯 /服部 剛
 
夜道を一人歩いていた 
道の先に立つ街灯が 
辺(あた)りをほの白く照らしていた 

街灯の細い柱に凭(もた)れると
地面に伸びる
薄ら哂(わら)いを浮かべた 
私の影

数日前
私の頭の中の小さい器(うつわ)に入った水は 
誰かの悪戯(いたずら)な言葉に沸騰(ふっとう)し 
波立ち 溢れ
影の瞳には涙が滲んでいた 

街灯の真綿(まわた)の光に包まれた私の傍らに 
朧(おぼろ)な姿で「ある独りの人」が立っており 
耳元で囁いた 

( 私の愛に、とどまりなさい・・・ 

地面にうつむく
私の影 

その頭の中の 
空(から)になっていた小さい器には 
いつの間に 
水が湧いており 
私の心は不思議と凪(な)いでいた 


道の片隅には 
草の茂みの暗闇に 
一輪の小さい向日葵(ひまわり)が立っており 
一心に 
小さい太陽が咲いていた 




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