狐月夜の物語 (三つの狐つきのうた)/降旗 りの
ねんころろ
だいてたあのこは どこいった
だいてたあのこは さとのむら
うそをついたら したぬかれ
うそをつかねば ねんころろ
うそをいわせた かのひとは
したのいたみも しらなんだ
おわれおわれて つきのよる
だいてたあのこは もういない
こよいはかぜが つめたかろ
こよいはゆびが つめたかろ
きつね なきます ねんころろ
ひがくれるまえに みたほしは
あのこがなくした すずだろか
あのこがないた かおだろか
「きつねつき」
かごにのせられ まいります
わたしをしらない あのまちへ
はるにははなが さくけれど
はるにはとりも なくけれど
しらないかおの しらないひとが
わたしをとおりすぎてゆく
はるにははなが さくけれど
はるにはとりも なくけれど
なくしたうたを うたうのは
つきがあんまり まるいから
なくすものさえ なかったら
つきもなみだに しずまぬものを
かごにのせられ まいります
わたしをしらない またまちへ
はるにははなが さくけれど
はるにはとりも なくけれど
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