矢車草が咲いた/黒田康之
矢車草が咲いた
どこに行くのか
よく判らない
この道の辺に咲いた
青い小さな草は
私の歩みにしたがって
くるくると
風を孕んで
ゆらゆらとゆれる
お前の白い太腿は
この
行方知れずの
この道の
遥かに遠い山々の全景を豊かに含んで
ふくよかに
まっすぐに
あの日のままに伸びている
その滑らかな感触を
微笑するかのように
青い小さな
矢車草は
小さく群れて道の辺に咲いた
それは
ゆえ知らぬ風を導く
ほんの小さな標のごとく
お前のその白い
ふっくらとした
その脚のために
咲いた
戻る 編 削 Point(6)