遠い雨音/大覚アキラ
記憶の中の薔薇、
遠い雨音、
耳を傾けると熱くなって溶けた蝋が
三半規管を逆流してくる。
深夜に、
再放送のドラマを垂れ流しながら、
スピーカーから零れ落ちてくる音を
ひとつずつ丁寧に拾い集めて、
そいつを増幅して爆音を作る。
いくつも、
いくつも。
そうやってできあがった
無色透明の爆音を等間隔に並べて、
整然とした街並みのミニチュアを作る。
爆音と爆音の間には、
人の形をしたものを等間隔に並べていく。
するとそこに、
何の前触れも無く孤独が誕生する。
隣り合わせに並んだ絶対的な孤独。
耳に指を突っ込んで塞いで、
訳もなく大声を上げてみたい。
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