神木/流人
雨降りのあと
新緑の疎水沿いを歩いた
みずみずしい大気
新緑の香
緑という色彩の香
青臭そうな新緑の葉っぱが
大御所の老木を包む
老木は知っている
世の中に存在する叡智とは何かを
新緑の葉っぱたちは
それを敬い、それに習う。
鳥たちが囀り、
葉っぱたちの先端から
透明の雫がクローバーの敷き詰められた地面に落ちる
動物たちは通り過ぎた雨足に
多くの恵みを見出し老木の下で休む
そういえばそこは、昨夜、蛍たちのダンスホールだった
小さな地球が回っている
守るべき小さな地球が
去り行く僕は、 いつのまにか虹を背にしていた。
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