呼び名/海月
 
名前を呼ぶことさえ躊躇った日々
嬉し恥ずかしいと赤面だったと思う
だから、僕は君としか呼んだことがなかったね

初めて二人で観た映画
その時流行りの純愛ラブストーリーだった
お互いの名前を知らずに恋に落ちていく
映画のラストはお互いの名前のないものだった

「さん」付けで呼んだ名前は苦しかった
君は頬を赤く染めて僕の名を呼んだ

手を触れて抱きしめて
それから先は速かった

机上の上でしか知らない知識
実践で使うとなると無知になった
物事はゆっくりと執り行うべき
だけど、僕は足早に切り上げたね

君の名前を呼んだのはあの時の一度だけ
呼ぼうとすると声にならない感情が押し上げるんだ

だから、もう、呼べないと思う
これからもずっと呼び名は君としか呼べないと思う

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