セントライト記念にて/降旗 りの
「まだ早い」
その瞬間 誰もが手を握りしめた
第2コーナー
その馬はこらえきれずに前へ出た
からだ中で訴える
もっと前へ
もっと先へ
場内アナウンスが聞こえる
「1,000m 58秒で通過」
速過ぎるこのタイムが意味することを
見守ってきた者たちは知っている
暑すぎたあの日がよみがえる
もう一度
このレースには次のチャンスがかかっている
もう一度
このトラックの一瞬に
馬たちがすべての力を振り絞って追い抜きにかかった
中山競馬場 最後の直線
トゥルーリーズンを引き離す
馬群を抜いてホオキバウェーブが駆け上がる
追いつけるか
抜かれるか
バルク バルク
バルク バルク
願いでも叫びでもある声が名前を連呼する
コスモバルクが帰ってきた
あの日より一層大きくなって
飛び交う声が歓声に代わる
その日 コスモバルクは1秒9も時計を縮めたコースレコードを打ち立てた
(2004/09/30)
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