静かの森の/夕凪ここあ
 
あの子は 静かの森に行ったきり
戻らない
あの子はまだ少女で汚れも知らない
あぁ、ただ戯れてただけ

静かの森は
少女を連れ去ったきり 呼びかけても返事さえない

呼びかけるなら
少女の名前 もう抜け殻とおんなじ
呼びかけるなら
呼吸してる名前 あたしの名のような



日曜の朝には
温かい林檎のパイを焼いて
午後にはママと湖のほとりに腰掛けて
吸い込まれそうな薄い緑の色をした
湖とおんなじ色をした 少女の瞳に宿る
おとぎとは似ても似つかない
深い底は冷たくて もう戻れない
静かの森

 あぁ、まだママは気づいてないわ。

少女の赤い唇

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