ビデオテープ/海月
それは景色を切り取り生き続ける
声や呼吸もちゃんとしている
今を生きていなくてもその中で生きている
東京の風はいつも乾いている
目は乾燥して涙すら出ない
泣くことはここに来てからしていない
君と出かけた場所は数知れず
その分だけビデオテープ
いつも笑って僕を見ている
足早に通り過ぎる人々の足音
君は困惑の表情を見せてわき道にそれた
空はビルの谷間に挟まれて見えない
灰色の握力に潰されてしまいそうだった
夏の暑さに負けてしまう毎日
アスファルトに反射して眩しい
虫眼鏡で光を集めたことを思い出した
水族館を特集していた番組を見て
混んでいるのにも関
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