薫風 ?日本ダービー?/tanu
 
八千頭の同期生に与えられた枠は
十八しかない

歴史に名を刻むのは
たった
一頭

そこへたどり着くまでの
長い長い闘いを知っているから
今にも折れそうな四本の足で
一生に一度のチャンスを
必死にもぎとってきたのだから
僕は彼らに
熱い想いを抱かぬわけにはいかない

「一番運の良い馬が勝つ」

運の尻尾を掴み損ね
ここに来られなかった多くの仲間が
君たちの姿を
どこかでじっと見ているはずだ

勝者に会うために
僕は競馬場へ出かけてゆく
だが この日だけは 別
ダービーに臨む全ての馬に
僕は心から拍手を送ろう

二分三十秒のドラマに
参加できる君たちは
幸運なのだ
この温かい風の吹く場所で
午後の陽射しを浴びている君たちは
幸福なのだ
君たちの蹄の音を聞いている僕も…

そこにいるだけで
それを見ているだけで
幸福な気持ちになれるレース
日本ダービーはいつも
心地良い薫風の色をしている

戻る   Point(1)