シスター/海月
 
霧雨が降り南からの風は潮の匂い
傘を持たない僕は教会で雨宿りをする
教会の壁画に祈りを捧げるシスター
何を祈っているのかは神なんかが知るぐらい
小さな希望があれば人は生きていける
それは叶わぬものだと知っていても

午後を金色のベルが告げる
彼女は一心不乱に目を閉じて祈りを続ける
その姿はきっと天使なんだろうな
僕は見たことがないから解らない

見えない十字架を背負って少年が来た
泣いているのか雨で濡れているのか判断が出来ない
聞き取れない言葉を少年は呟いている
一途にに許しを乞いているように見えた

雨は一向に止む気配はなく
南から吹く風は徐々に強くなり
窓枠は鈍い音を立てて今にも壊れそうだ

その少女はいつ来たか分からない
ダンデライオンと書かれた古い本を読んでいる
何度も読み直したのだろう
頁は所々破けている

シスターは僕に向かいこう言った
明日の明け方まで雨は止まないで
今夜は此処に泊まっていくと良いでしょう

僕が雨宿りした小さな教会
壁画にはシスターが祈りを捧げていた
そのことを気づいたのが次の日が朝だった
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