錘/蒼木りん
夜道に影ができて
月が出ていることに気づく
私が見ている月
月も
私を見ていた
気がした
哀しい
哀しい気がしているだけ
疲れた
それは気のせいじゃないけど
自分のために
だとか
いまは
そういう余裕がなくて
せっかちな人が苦手なのに
自分もせっかちにならなくちゃ
ならなくて
ふんふん
泣きたくなるけれど
そんな暇もない
川の流れは
思っているのと逆で
なぜこんな平地で
北から南に流れていくのか不思議
地球が
丸いからとか
そんなことも
忘れている
にんじんを
育てる想像をして
もう出来上がったにんじんしか
写らない
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