真昼の足音/松本 涼
 
伸びきった痛みのような影を連れた私は
ポッポッポととぼけた足音を立てて
真昼をへこませながら歩いていた

青色に成り切れない低い空には
子供の頃に想像した太陽があって
色鉛筆のタッチで光が降っていた

私にはヒトリゴトでさえ
言いたい事が無かったが
いつもように影の方は話したがりだ


「引きずるほどじゃないけれど
 手のひらに乗せられるほど
 時間は軽くないね」

私は影の言葉を無視して歩いた


やがて私は大きな木以外何も無い公園の
大きな木の下で休んだ

影はたくさんの葉の影と交わり
少し幸せそうだった

「あと少し
 もう少し
 ここにいようよ」


私は影の言葉を遠くに聞きながら
置いてきた足音たちのことを
取り留めもなく考え
それからしばらくの間眠った





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