生きるほどにいくあてのない憂いが押し寄せる/伊藤洋
生きるほどに、いくあてのない憂いが押し寄せる
生きていく希望を、生まれた孤独が上回り
私を生みし母を一人恨み、そして生まれしことを一人悔やむ
ああ、そこを通る美しい人よ
その路に転がったブロック塀で
私の後頭部をぶち抜いてくれないだろうか
そして私の頭から血が滝のように噴き出したら
私をミキサーにかけ、そのまま豚の餌にしてくれないだろうか
あるいはその豚を海に沈め
我が絶望が海洋を汚染するのを手伝ってくれないだろうか
汚染された海水は、蒸気となり地球を覆い、雨となり、山河を流れ
そのとき、神なき我等が友人は、絶対零度の孤独に凍え
街行く女共の子宮を食い散らすだろう
ああそこを通る美しい人よ
われと我が友人がこれ以上凍えないよう
そしてこれ以上凍えるものが増えないように
私はこうして後ろを向いておくから
ひとつ、最高の人助けと思って
そこに落ちているブロック塀を手にしていただけないでしょうか
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