陰翁/日雇いくん◆hiyatQ6h0c
ぼおとしながら、顔を正面から左の方へ廻し、窓の外をなんとなく眺めていると、何かが動いていた。
うすぼんやりとしていたからよく認識していなかったのだけど、何故だか、それだけは認識できたのだ。
不思議に思い、しばらくじっとそれを見つめていると、それはどうも空気の様だった。風になびいて、何かが動いた様子だった。
風の色をそれとなく見分けながら、さらに注視していると、どこかの山の向こうから呼び声が聞こえる様に、微かながらふぁ、ふぁ、という感じの音がする。遠くから聞こえる様でもあり、近くで何かが鳴っている様でもあった。
やがて、そのわずかな振動が、音の大きさはそのままで、頭の中でぐるぐると
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