雨天の散歩/海月
クルリ クルリ
傘を差しながら自転車を漕ぐ学生
すれ違ったときに傘からの水滴が私に当たった
少しだけ頬が濡れた
パキパキ パキパキ
小枝は音を出して割れる筈なのに割れない
少しだけ沈んだ地面が其処に在る
私の歩んだ奇跡
ピチャ ピチャ
水溜りを踏む音を響かして歩く
跳ねる水滴が裾に滲みこんでも気にしないようにしたけど
靴の中に沁みこむ冷たさは我慢できなかった
コツコツ コツコツ
傘をコンクリートの床を叩く
並んだ本の端の方に目が留まる
詩集コーナーと書かれていた
バリ バリ
袋を破く音が静寂を打ち破る
一冊の本を手に取り眺める
読み終わった後に小さく雨が降った
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