夕焼けが眠る川/mina
に聞いた話
曾おじいちゃんと 遠い別れになるかもしれない夜に
一緒にみたという
草木や魚たちの密かな寝息が漂っている川辺で
曾おばあちゃんは 声も立てずに涙を落とし
ただ この時が止まってくれるよう願っていた
曾おじいちゃんは その夜多くの言葉を語らず
みてごらん と
橋の真下の暗闇を指差した
淡白く光る指先の先には その指先の延長のような
光を発するものがあった
曾おばあちゃんの涙を抱えた瞳には
それが 夕焼けにみえたそうだ
あそこに 僕の気持ちを置いておくから
曾おじいちゃんは そう言って二度と帰らぬ人となった
*
夕焼けが
曾おじいちゃんの指先から生まれたと信じる君は
曾おじいちゃん譲りかもしれないその美しい指先で
ピアノを弾き始めた
どこか わたしの知らない小さな町角の
小さなピアノバーで
わたしが受け取れなかった言葉の意味を込めて
通り雨が落ちる川のどこかで眠り続ける
夕焼けを
探しているかのように
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