僕/加藤泰清
 




その時、僕の頭はすこぶる回転していました。
人一倍大きい頭は、
”オレはこの経験を活かして、エッセイを書くんだ。その為に万引きをするんだ!”
という理由を第一の理由として脳に擦りこませてしまいました。
記憶の書き換えというものを初めて実感した日だったと思います。
(体験だけは幾度もしていただろうと思います。)




だがしかし、僕は結局そのことをネタに文章を書きませんでした。
正確にいうと忘れてしまったのです。
そう、自転車に乗ってそのことについてあらゆる考えをめぐらせていたからです。
家に着くとすっかり記録は抹消され、万引きをしたという事実のみが鞄に残
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