「あたりまえの日々」/服部 剛
 
に座った初老の婦人は 
眼鏡(めがね)の奥の瞳に涙を溜(た)めて
「 今度の金曜日、
  まだ四十前の娘が乳癌(にゅうがん)の手術を受けるんです・・・ 
  小さい子供もいるんです・・・祈ってください・・・ 」 
と胸に詰まった想いを打ち明けた 

三 

喫茶店を出て皆と別れ
参加した朗読会から帰る電車の中で 
遠藤周作の「 私が棄てた・女 」の続きを読むと * 3 
瀬病(らいびょう)になり隔離施設へと歩く主人公のミツが 
愛する人の名を呼び「 さいなら・・・ 」と言っていた 

四 

電車を降りるとすでに午前零時(れいじ)を過
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