惜春/あおば
た
ああ だから今は前後左右女に囲まれて
私の意志は無くなって諦観の悟りを得たり
前の車ブレーキかけるな 絶対にかけるなよ
全身全霊をもって念を送り ポンコツ車の
アクセルをひたすら踏み続けくたびれ果てた
狭い路地の角を曲がって停車すると
隣家の八重桜の下には一面の花びらが
ぬれた路面に付着して助けを求めている
俺はどうしたらよいのかと見上げると
風雨に疲れた木の幹が俺をじっと見つめている
この花が散ると GWを迎え 初夏になるのだ
作1999/04/30
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