杏/半知半能
あんずの木が
温かい午前の光に
淡く染められている
あんな風に笑えますかと
あなたは訊きましたね
異邦人と呼ばれる彼が
いつまでも私のそばにいられる訳も無く
いらだちと不安だけは
いらないよと
言い残して
行ってしまった
売り買いできる言葉に溺れる時代に
うつむいて見えたのはぐらついた足場で
嘘と見栄で危なく支えられている
うまく生きて行くことだけを教えられた学生時代に
噂で聞いた隣町の巡業サーカスのことが
埋もれず時に思い出されるように
浮かぶ記憶の泡の中のあなたは
潤いを与えてくれます
笑みがこぼれる度に
永遠のようだった時を越えて
おーいと
遅れてくる声に
思わず泣いたりしないように
お日様の下で風に包まれながら
大きい笑顔の用意をして
おかえりと言う日を 待っている
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