『僕がギターを抱いていた理由』/川村 透
彼女のステージを見た、僕がいる
彼女のステージに居た、僕がいる
僕はギターを抱いていた。
濁った目の天使
君は熱に浮かされて、ステージの袖に立ち
蒼い肩から白い腕を覗かせる。
僕はギターを抱いていた。
盲目の白い少女は、濁った色に頬をほてらせる、あの日のアルビノのように。
見えない、けれど、聞こえる、モノに
打たれ、
君はもう一度だけ、泣きたくなった?
僕はギターを抱いていた
僕はギターごと君を抱いていた。
春の空気はフルートさえも湿らせるのか
陽炎のように立ちすくむ無言の楽団
僕はギターごと、君を抱きしめていた。
汗は流し
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