雲の泉/服部 剛
 
もくもくと
ただもくもくと
ふくらむままに
あなたをだいじにすればいいのに

入道雲の中では
小さくちぎれた雨雲が
ちくり ちくり と
針の雨を降らせ
あふれる想いを傷つけます

頬落ちる 綿菓子の甘さ どこへやら
幼き夢に 疼(うず)く手のひら

陽が暮れて 祭りの笛に 吸いこまれ
ふと気づく 舌に溶けゆくちぎれ雲

祭の後
たたずむ一人ぼっちの浴衣少年
さびしい懐(ふところ)から
しめった雲があふれつづける
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