黒猫の瞳/服部 剛
 
に手をあてると 
詩集の中には 
独りきりの夜にもの想う 
若き詩人の君がいる 

君の一編の詩を読み
紅茶の最後の一口を飲み終えた僕は 
閉店前の Cafe を出て
駅へと続く夜道を独り歩き 
終電の揺りかごに頭を垂(た)らし 
ひとときの幸福な夢を見る 

目が覚めて 
無人の車両から降り
屋根の無いホームの端(はし)から 
欠けた月が浮かぶ夜空を仰(あお)ぐ

僕のリュックに入っている 
詩集の中を独り彷徨(さまよ)う夜の黒猫をじっとみつめる 

 ( 空 ) 

からのまなざし 

これから描かれるべき物語を託され
歩み続ける黒猫
闇に光る瞳の先を見据えている

果てなく広がる 

空白の未来







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