ホムンクルスの王/鏡文字
 
そこにひとつの「o」が
存在する時
輝く不在が
痛みとなって主張し始める
通過されない「o」と
見えないものを要約し続ける「o」とが
朽ち果てた「o」を媒介に
あらゆる内容を形成する

「o」が生まれたとき
彼の新しい右耳は
エロスという名前と出会った
太陽は「o」の真上にあり
周囲の影を吹き払った
同様に
「e」は失われ
「o」の減少が始まった

「o」が消滅しかかったその時
彼の待っていた獣が
塔から出てくる
月光を浴びて蒼白いその背に
打ち跨っていたものは
無用の「a」であり
もうひとつの「o」である

火炎の夜
彼と共に
我々も喜びの
[次のページ]
戻る   Point(2)