「?」 /服部 剛
朝起きて
寝ぼけた面(つら)で
鏡を見たら
直毛の黒髪の中から
ふにゃりとした白髪(しらが)が1本
飛び出していた
指でつまんで
ハサミで切って
手のひらにのせる
( 決して働き者じゃない僕も
( 三十歳(みそじ)を過ぎてもなお
( 不器用に世を渡る日々に
( 少しはくたびれていたらしい
手のひらにのせた
ふにゃりとした1本の白髪
よくみると ? の形
仕事でミスって凹んだ夜の
うなだれた自分の姿
鏡に映る自分という人の頭の中は ?
僕の元から離れていったあの娘(こ)の心は ?
テレビの箱の中のおかしなニュースは ?
出勤する全ての企業戦士のスーツの背中にいつも浮かんでいる ?
手のひらの ? をつまんでゴミ箱に捨て
玄関を出た僕は
いつもと変わらない荷物を背負い
いつもの駅へ
見上げた空には
形の崩れた ? 雲
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