春は悪戯に咲き、そして散っていく/かのこ
 
春はなんだか
息苦しいのだ
花のかほりが
痛々しいのだ

少し、夜が短くなっただけ
当惑する私を
あなたは涼しげな顔で見て
そして、微笑んだ

惜しみなく手を伸ばす癖を解(ゆる)して
それだけで仕合せなのだと
気付いた今
その首筋にすがりつきたいなんて
春の悪戯に斉(ひと)しい衝動が
邪魔だとすら思った

どうして微笑んでくれたのか
理由を知りたい
そう思って、熱のこもる床の中
夢の中でまたあなたは微笑む

嗚呼、きっと春の息苦しさは
芽吹く躯(からだ)が疼(うず)くように
夜を覚えたのは
あなたの吐息に触れようとする為

仕様のないことだと言ってしまえば、それまでだろう
あなたの背後で
春が嗤(わら)いながら私を見ている
あれはあなたの連れでしょうか
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