口笛でブルース/紫音
 
灰色の聳え立つそれが黒に沈む

飲み込まれてゆく感情

溶け出してゆく夢想


終わりの始まりに手を触れて
 したり顔で肯く


足元を転がりゆく塵に成り果てた新聞紙の
見出しを一瞥し

口笛でブルース


殺したのは何
消したのは誰


 衰えゆく街並みに
そっと吐息


   天から降り注ぐ星明りに

 人差し指を向け


  押し潰す



老人が刻んだ言葉を
 舗装し上書きし

幼児が刻んだ足跡を
 塗り潰し染め上げて



 つま先で踏みつけるのは今


散り逝く季節の

抗えぬ流れの

埋没してしまった生の

成れの果てだとして


 それは何を望む

本当は










そんなことは何も感じていない









口笛でブルース




ブルースの意味なんて




                       そこには何もない

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