幻の太陽 /服部 剛
深夜の浜辺で
青白い顔をした青年は
焚(た)き火の前で膝(ひざ)を抱えている
肩を並べていた親しい友は
すでに家路に着いた
胸の内に引き裂かれた恋心
誰の手にも繕(つくろ)えず
只(ただ) 青年は燃えさかる炎をみつめながら
やり場のない情念を溶かしていた
見上げれば
夜空の闇に昇る幻の太陽
燃えている
報われぬ愛を嘲(あざわら)うかのように
散りばめられた星達が囁く唄
押し寄せるように繰り返す波音
頭を揺らす焚き火の炎
青年の痩(や)せた肩に置かれる
風の掌(てのひら)
戻る 編 削 Point(15)