幻の太陽 /服部 剛
 
深夜の浜辺で
青白い顔をした青年は 
焚(た)き火の前で膝(ひざ)を抱えている 

肩を並べていた親しい友は 
すでに家路に着いた 

胸の内に引き裂かれた恋心 
誰の手にも繕(つくろ)えず 
只(ただ) 青年は燃えさかる炎をみつめながら 
やり場のない情念を溶かしていた 

見上げれば 
夜空の闇に昇る幻の太陽 
燃えている
報われぬ愛を嘲(あざわら)うかのように 


散りばめられた星達が囁く唄 

押し寄せるように繰り返す波音 

頭を揺らす焚き火の炎 

青年の痩(や)せた肩に置かれる 

風の掌(てのひら) 




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