*満腹なおおかみ*/かおる
萌え出ずる若葉の頃、
1匹の灰色狼が池のほとりに佇んでおりました。
なんということもなく、お腹いっぱいで、
ひらひらと舞い落ちる華筏が造る波紋を
ぼんやりと眺め、いつの間にか、
うつらうつらとしているようです。
フワ〜と大きなあくびを一発、
するとやはり杉花粉を一杯吸い込んでしまったようで
盛大なくしゃみが出てしまいました。
『バ、クッショ〜ン、て〜い、こんチクショ〜ン』
寄りかかっていた樫の樹の枝葉に竜巻のような大風となって、
鼻水まじりのくしゃみが襲いかかっていきました。
その枝の葉影では、
春の蜜集めに忙しい
働きアリさんが隊列をつくって、
巣穴
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