カオリン・タウミに捧ぐ/服部 剛
 
その破天荒な男は 
ある晩、僕等の目の前に現れた 

目に映るあらゆるものに逆らい
虚空に拳を殴りつけ 
いつも目に見えない何者かの影に怯えながら
心の弱さと戦う彼は 
一体何を求めていたのだろう 

土曜の夜の場末のBarで 
マイクを手にした
彼の口が羅列する機関銃の言葉 
誰の手も届かない心の懐(ふところ)に 
疾風は吹き抜け 
月夜の狼となり吠える声に 
深夜の酔いどれ達はふり向いた 

一瞬の静寂(しじま)の後に 
彼は何度も呟いた 

 ( I gotta I gotta I gotta・・・ ) 

 ( アイガ アッタ・・・
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