春の夢 /
服部 剛
高く昇り
風の手のひらに握られた
見えない綱に引かれて
首輪をした痩(や)せ犬の私は
上り坂を這ってゆく
遠ざかる背後の並木道に
舞う桜吹雪の向こうに並ぶ
家族や友人達
不思議と幸せそうな顔で
遠くから見送っている
十字架にかかった人の足元へと
渇いた喉(のど)を潤(うるお)す
一滴の水を求めるように
ひと足ずつ近づいてゆく
痩せ犬の私を
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