【物語詩】ドリアッド〜Please beloved, Please/AKINONA
 
夜毎密かに夢見ている私を

愛する人よ
愛すれど愛せぬ乙女よ
抱きしめたら儚く消えてしまわないだろうか
その細く白い躯はあたかも
森にたちこめる朝靄の果ての
踏みしめることの叶わぬ不可侵の聖域
愛の足跡(そくせき)も許されぬ清らかな砦

だが愛する人よ
傍らで憩う愛らしい乙女よ
私の夢想がいつの日か侵略者の炎に変わり
この腕に抱える十二本の弦をも焼き切り
一瞬にして全て儚く溶かしてしまわないだろうか
桜の季節に未だ残る優しい淡雪の信頼を
二人堅牢な絆の上を共に歩み続ける未来を

そして今やあなたの吐息、声、仕草の全てが
私の心の奥の燠火(おきび)を駆り立てる
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