雨に詠えば/松本 卓也
しか思いつかなくて
気がつけば今日も同じ言葉で
寂しさと妬みを囀っている
どれほどの無意味さを生んできたのか
洗い流す雨は知っているはずなのに
燻らせる湿気た煙草に
誤魔化してきた数々が
胸に残ったままなのだから
僕はきっとまだ明日に行くべきでなくて
引き留める雨脚に晒される事を
奥底で望んでいるのかもしれないのに
何遍も何遍も
勝手気ままに期待して
勝手気ままに裏切られ
勝手気ままに立ち直り
勝手気ままに生き延びて
勝手気ままに
勝手気ままに
雨が止むのを待っている
流れるだけ流れつくして
最後に頬を伝う小さな一粒を
掌に掬い取ってみたいだけなんだ
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