ひよこ/ヤギ
 
まず、宿太(しゅくた)は色の多さに驚いた。
押し並ぶ品々の金色や銀色も、
人々の浴衣の薄紅色や朱色も鮮やかだったが、
それらがぼんやりと滲(にじ)んで、混じり合い、
透明に光っているのが不思議で美しかった。
次に、ここはどこだろう、と考えたが、
もう人波に押されて歩きはじめていた。
宵宮(よいみや)のようだった。
奇妙なことに、参拝客や香具師(やし)の体からは細い糸が生えていた。
近くに寄って、じっと目を凝らさねば気がつかぬほどの、
極(ごく)細い糸ではあるが、
頭、足、指の関節の一つ一つ、
さらには目蓋(まぶた)に至るまで無数に生えてい
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