両目に潜む鬼/ユメアト
あたしは二月三日が嫌いなのだ
豆まきが恐い
豆まきと言うより鬼が恐い
鬼のお面があたしを見るのだ
鬼のお面に開いた二つの穴からあたしを見るのだ
二つの穴から覗く目は
母であるときもあれば
父であるときもあり
最近は弟も大きな目を小さな穴から覗かせる
あたしは絶対覗かない
あたしだけは一度も鬼の空っぽの目の裏側から
家族を見たりしていない
鬼のお面は被っちゃいけない
二つの穴から覗いては駄目
きっと
鬼に囚われる
そんなこと言えないから
あたしは毎年二月三日は
仲の良い家族の振りをして豆をまく
両手に掴んだ落花生が
指の
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