無言の声援 〜同僚のMさんに〜 /服部 剛
道路を去ってゆく車を見送った後
駐輪場に入る
僕の帰りを待っていた自転車は
隣で倒れた自転車に寄りかかられ
傾きながらも踏み止(とど)まるように立っていた
力の抜けた自転車のサドルに手を置くと
やけに冷たかった
ハンドルを握り
しっかりと立て直す
( 大丈夫、君は立てるんだ
( お年寄りと僕等の過ごす日常に、素朴な天国を創りたいんだ
( 誰一人、今のスタッフから欠けちゃいけないんだ
なだらかな夜の坂道を自転車で下りながら
数日前「私、もう辞めようかしら・・・」と言っていた
M さんの声が耳の奥に蘇(よみがえ)る
( 独りきりの君の傍らで僕は
( ゆっくりと自分らしさを取り戻すまで
( 明日も無言の声援を贈り続ける
戻る 編 削 Point(5)