他人の空/窪ワタル
 
夕空を染めたニッポニア・ニッポンを知らない
雲は刻々と変わり稜線が滲む頃
ニッポニア・ニッポンは茶の間へ来た
貨物船に乗せられてたった二羽だけ

ニッポニア・ニッポン達は知らない
自分がたった二羽のうちの一羽で
四つ目の名前を付けられ茶の間で見つめられるのを

テレビが佐渡島の夕空を映す
何も知らないニッポニア・ニッポンに重ねて
世界のニュースを映す
遠くの戦場の少女も
記憶喪失の政治家も
いじめっ子の少年Aも
四角い檻に捕らえられて
もう何処にも行けない

四角い檻の外には誰もいないのだ

気付かずにいる視線の向こうに
幾千億のニッポニア・ニッポンがいる

他人の空は深く広い
ニッポニア・ニッポンはもう羽ばたかない
鼻先にシチューの香りがする
もうすぐ母が ごはんよー と呼ぶのだ



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