幸福駅/窪ワタル
 
真っ白ならそれは
無目的な終点で

切符を破く

錆びたレールがセイタカアマダ草に埋もれて
どこで途切れているのか きっと誰も知らない
幸福駅 という名前の駅に流れ着いた若者は
それでもやがては 髪を切って街に帰って行き
もう忘れてしまった日 死んでしまった時間に
旗を立てるはずだった場所さえも
与えられたものだともう気付いてしまったのだ

背中に続く轍には鍵がかけられていて
誰かに見つけられるのを待っている

人差し指の向こうには幸福駅が初めからあったのだ

改札のない今日が過ぎてゆくので
セイタカアワダチ草のように
静かに揺れてはいられないだけなのだ

翻るのは昔の
長い髪ではない
鍵のかかった轍は続く
遠くで汽笛が鳴る

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