僕と君と麦わら帽子と本   第二章/こめ
 
老人しかいなかった

ぼくは夜、バーで仕事をしているため

朝と昼はほとんど暇なのである

まあ、みんながいうフリーターのような感じだった

まあやることがないしバーのアルバイトだけでも

そこそこ生活できるのでよかった

ふとデジャブのような感覚に襲われた

どこからか人間の視線を感じ取った

デジャブのような感覚は

前にもこの視線を感じたことがあるからだった

ふと2,3日前小川のそばに座っていた彼女のことを

思い出した

パタンと本を閉じ

そしてこの前その彼女を見かけた方に目をやった

するとこの前と変わらず彼女は深く

麦わら帽子をかぶりこんで

こちらを一心に見つめていた

ぼくも彼女に目を向けたが

どう見ても知らない女性だった

ぼくはゆっくりとたちあがり持ってきた荷物を持ち

彼女のほうに歩いて向かった


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