朧な太陽 〜空の色 ♯2〜/服部 剛
 
あのレストランの前を通り過ぎるといつも 
寂しげな人影が窓の向こうに立っている

何年も前、飲み会を終えた夜 
あなたはいつまでも電車を降りず 
家路に着こうとしていた私は仕方なく 

「じゃあ、ファミレスにでも入りましょう」 

と明るい声で拍子抜けな答を暗黙の内に伝えた 

「あなたはぐずぐずしていながら、とても頑固な人ね」 
「いやぁ、寂しがり屋なくせにマイペースなもんで・・・」 

今日僕は 
列車の輪音に少し振動する駅の広場で木のベンチに腰かけ 
舞い降りてきた無数の鳩達が 
重い荷物を降ろした初老の男が投げるパン屑に群がり
それぞれに啄ばんでいる日常
[次のページ]
戻る   Point(8)