朧な太陽 〜空の色 ♯2〜/服部 剛
あのレストランの前を通り過ぎるといつも
寂しげな人影が窓の向こうに立っている
何年も前、飲み会を終えた夜
あなたはいつまでも電車を降りず
家路に着こうとしていた私は仕方なく
「じゃあ、ファミレスにでも入りましょう」
と明るい声で拍子抜けな答を暗黙の内に伝えた
「あなたはぐずぐずしていながら、とても頑固な人ね」
「いやぁ、寂しがり屋なくせにマイペースなもんで・・・」
今日僕は
列車の輪音に少し振動する駅の広場で木のベンチに腰かけ
舞い降りてきた無数の鳩達が
重い荷物を降ろした初老の男が投げるパン屑に群がり
それぞれに啄ばんでいる日常
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